ここでは糖質制限がアルツハイマー型認知症を予防する理由について述べています。
免疫力で認知症を予防するためのひとつの方法として「糖質制限」が挙げられます。
しかし「糖質制限」といっても、ここで述べようとしている「糖質制限」は、血糖値の急上昇や乱高下を防ぎ、糖尿病やアルツハイマー型認知症の発症を防ぐために必要なことであり、極端に「糖質ゼロ」を推奨するものではありません。
アルツハイマー型認知症を予防するための「糖質制限」とは、具体的には、白砂糖や果糖ブドウ液糖、精製でんぷんといった、血糖値を急激に上げる糖質を控える「糖質制限」のことを指します。
特に糖尿病と認知症の発症は隣り合わせだとされています。
そのため普段の食事において、急激に血糖値を上げたり、血糖値の乱高下を引き起こしたりする糖分の摂取を30代や40代・50代から気をつけることで、糖尿病を予防していくことは、そのままアルツハイマー型認知症を防ぐことにもつながっていきます。
・不規則な生活習慣と食習慣、運動不足、短い睡眠時間、喫煙
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・高血圧、脂質異常症、動脈硬化 + 肥満
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・インスリン抵抗性の増大
↓
・糖尿病
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・インスリン抵抗性のさらなる増大による脳内のβアミロイド・タンパクの蓄積
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・脳の表面の老人斑の出現
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・5~10年後に、脳の内部にリン酸化タウの蓄積
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・3~5年後に、軽度認知障害(MCI)の発症
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・数年後にアルツハイマー病を発症
(森下竜一・桐山秀樹『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』p72~73)
その「糖質制限」のメカニズムについては、『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』(森下竜一・桐山秀樹 著)の中で、以下のように述べられていますので、参考にしてみてください。
糖質制限のメカニズムは、シンプルである。
人間の三大栄養素と呼ばれる糖質、タンパク質、脂質のうち、血糖値を上昇させるのは、基本的に糖質のみ。特に白いごはん、白いパン、精製した「白い炭水化物」を短時間にドカ食いするスタイルで摂ってしまうと、血糖値が急上昇する。そのままでは危険なので、それを降下させるため、膵臓からインスリンの追加分泌が大量に起こる。
また、1日3日の食事に加えて、間食やおやつなどで間断なく糖質を摂り続けると、その都度、血糖値が上昇し、それを降下させるたびにインスリンが分泌される。その際、血管内では、グルコース・スパイクと呼ばれる激しい血糖値の乱高下が起こり、高血糖状態が続くことで、血管内の内皮が傷つけられる。傷口にふたをするために、血栓が付着して、動脈硬化などの原因となっていく。(森下竜一・桐山秀樹『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』p77)
糖質の過剰摂取→血糖値の上昇→インスリンの追加分泌の連続→皮下脂肪・内臓脂肪が腹囲に蓄積→インスリン抵抗性の増大→インスリンの分泌し続ける膵臓の疲弊→血液中の血糖値の日常的な上昇→高血圧、脂質異常症、糖尿病の発症→そして脳内のβアミロイドの蓄積――。
こうした「負の連鎖」によって、最後は糖尿病からアルツハイマー病の発症に至る。それを断ち切ってくれるのが糖質制限なのである。(森下竜一・桐山秀樹『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』p77~78)
また、『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』の中で、糖質制限を行う際の注意点として以下のように述べられています。
ただし、糖質制限を行う間は、糖質に代わってタンパク質、良質の脂質を以前より多めに摂らないと、エネルギー源が枯渇してフラフラになって危険だ。
例えば、新鮮な肉、魚、卵、豆類をタップリと摂り、肉や魚と同時に食物繊維を摂って腸内環境もよくしておくことが必要だ。
糖質制限は、主食の代わりに肉や魚をいくらでも食べていいと勘違いされるが、物事には全てプラスとマイナスの側面がある。糖質をせっかく制限しても、肉の脂身やバターなど「飽和脂肪酸」と呼ばれる質の悪い脂質ばかり摂っていては、せっかくの糖質制限も効果が半減してしまう。
そのためにも、脂身はできるだけ控えるようにし、牛や豚の赤身や鶏などの肉類を以前より多く食べ、食物繊維の豊富や野菜をまず先にタップリと食べる。(森下竜一・桐山秀樹『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』p80~81)
こうして糖質制限によってメタボから短期間で脱出し、血糖値を下げて、糖尿病のリスクも減らしておく。その結果、インスリン抵抗性も低くなり、アルツハイマー病を引き起こすβアミロイドの蓄積も食い止められる。
世の中、あれもこれも同時に行おうとすると必ず失敗する。まずは、一定期間、厳しめの糖質制限を徹底することで、メタボから短期間で脱出し、血糖値も下げて、糖尿病のリスクを軽減しておくのがいいだろう。(森下竜一・桐山秀樹『アルツハイマーは脳の糖尿病だった』p82~83)
上記の引用文でも述べられていますが、「糖質制限」の注意点としては、まず第一に、「糖質制限」をする代わりに、後は好きなだけ肉を食べてもOKというわけではないということが挙げられます。
冒頭でも述べましたが、認知症予防のために行う「糖質制限」は、血糖値の急上昇や乱高下を防ぎ、糖尿病やアルツハイマー型認知症の発症を防ぐことが目的ですので、「糖質制限」をする分、代わりに糖質が含まれない食品を好きなだけ食べても良いというわけではないのです。
また普段から甘い物を好んで食べているにも関わらず、いきなりストイックな「糖質制限」を行うこともあまりオススメできません。
なぜなら最初からあまり無理をしてしまうと、結局、途中であきらめてしまいがちになるからです。さらに口にする食べ物に対して神経質になりすぎることが、からだに対して下手に悪影響を与えてしまうことも考えられます。
そのため、40代や50代のうちからアルツハイマー型認知症を予防していくためには、まず自分の出来る範囲で、白砂糖や果糖ブドウ糖液糖、精製デンプン、終末糖化産物「AGE」(AGEs)などを日頃の食生活から減らしてくことが必要になってくるように思われます。
ちなみに「糖質」とは炭水化物から難消化性の繊維質を取り除いたもののことを指します。
つまり、「糖質=炭水化物」ではなく、「正しい糖質制限」とは、決して炭水化物を食事から全て除去してしまうことではないのです。
炭水化物には食物繊維やオリゴ糖など、腸内細菌のエサになり、腸内環境の改善に欠かせない栄養成分も含まれてきますので、そのことを踏まえた上で糖質制限を行っていくこともからだの脳の調子を健康的に維持するうえで大切になってきます。
特に低GI値のオリゴ糖やココナッツシュガーを砂糖の替わりに摂るようにすることは、アルツハイマー型認知症の予防のためにおすすめです。
そのほか、糖質制限によるエネルギー不足を脂質から補うために有効な食材としては、ココナッツオイルが挙げられます。