免疫力でうつ病改善

免疫力を高めることはうつ病の予防と改善につながります。

 

なぜなら免疫力とは病気を退ける力であるため、うつ病を生命力が低下していることで起きる一種の病気と捉えた場合、免疫力を高めることは、心身の健康を回復することにつながっていきます。

 

免疫力の低下は、過度のストレスによる自律神経のバランスの乱れや腸内環境の悪化ミトコンドリアの機能低下などが原因で起こってきますが、うつの症状が起こってくるのも、それらのことと無関係ではありません。

 

では、うつ病を予防したり、うつの症状を改善したりするためには、具体的にどのような生活習慣が必要になってくるのでしょうか?

 

免疫力を高めてうつ病を予防するために大切になってくる生活習慣とは、食事・運動・瞑想であると思われます。

うつの改善には食事・運動・瞑想
うつの改善には食事・運動・瞑想が大切になってきます。

まず最初に食事についてですが、うつの症状を少しでもやわらげていくための食事として、大切になってくるのは、以下の3つです。

 

  • 腸内環境の改善・・・日頃から乳酸菌・食物繊維・オリゴ糖がたっぷりの食事をする。
  • ゆるやかな糖質制限・・・なるべく砂糖や精製デンプンを減らし代わりに食物繊維を増やす。
  • 油(脂質)の摂り方・・・サラダ油に含まれるリノール酸を減らし、代わりにDHA・EPAを増やす。

 

うつを緩和するには腸内環境を改善することが重要

 

うつの症状をやわらげていくためには、日頃の食事で腸内細菌の集まりである腸内フローラのバランスを整え、腸内環境を改善していくことで免疫力を高めることが大切です。

 

なぜなら「脳腸相関」や「腸脳相関」といった言葉が示すように、腸と脳は神経系でつながっているからです。また腸は脳で作られるセロトニンの前駆物質を生成しているとされています。

 

そのため、毎日の食生活において、乳酸菌食物繊維オリゴ糖発酵食など、腸内細菌にとって良い働きをする食品を積極的に摂っていくことが重要になってきます。特に日本の伝統的な発酵食である納豆や漬け物は腸内環境の改善に役立ってくれます。

 

糖質制限もうつの改善のためには大切

 

次に、うつの症状をやわらげるためには、「糖質制限」も重要になってきます。しかし糖質制限といっても極端に炭水化物を減らすのではなく、自分の出来る範囲でゆるやかに行っていくことです。

 

また大切なのは、砂糖や精製デンプン、異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)といった血糖値を急激に上げる糖質(高GI値)を減らしていくことです。

 

それらの糖質は血糖値を乱高下させ、不安定にさせ、低血糖の問題も引き起こしてしまいます。そしてこの血糖値が安定しない状態は精神的な不安定さとも深く関わってきます。

 

さらに糖質の摂り過ぎは、脳の炎症を引き起こす原因にもなるといいます。

 

したがって、うつの症状を少しでもやわらげていくために重要になってくるのは、普段の食事から白砂糖をはじめとした高GI値の糖質をなるべく減らしていくことです。しかし極端に「糖質ゼロ」にするのではなく、ゆるやかに行うことが大切です。

 

また、腸内環境を改善する働きがある食物繊維やオリゴ糖は、炭水化物や糖質の一部です。

 

うつを改善していくためには油の摂り方を変えることも必要

 

三つ目は、油(脂質)の摂り方です。うつを改善していくためには、サラダ油に多く含まれるオメガ6のリノール酸やトランス脂肪酸を減らし、代わりに青魚に多く含まれているオメガ3脂肪酸(DHA・EPA・α‐リノレン酸)をたくさん摂るようにすることが重要になってきます。

 

特にそのうちの「DHA」は、脳の健康のために非常に重要な働きをしていますので、日頃から十分な量を摂ることが大切になってきます。

 

また、DHAを含むオメガ3脂肪酸には、うつと深い関わりがあるとされる脳の炎症を抑える働きがあるとされていることも、注目に値します。

 

ちなみに脳の約6割は脂肪で出来ており、さらにその4割はDHAによって形成されていると言われているため、油の摂り方を変えることは、脳の神経細胞の健康を維持することにもつながっていきます。

 

しかしオメガ3脂肪酸は食事から十分な量を摂るのはなかなか難しいと考えられます。そのため、オメガ3脂肪酸の不足を解消するためには、DHA・EPAサプリメント亜麻仁油・えごま油を利用するのがオススメです。

運動のうつ病を改善する効果

運動のうつ病を改善する効果

運動を行うことは心と身体や、自律神経のバランスを整えるために必要不可欠です。

 

適度な運動は身体と心に様々な良い効果を与えてくれることはよく知られています。実際、運動をほとんど行わない毎日を過ごしていると、脳の同じ部位だけを使うようになり、心身のバランスは崩れていってしまいますが、ジョギングなどの運動を無理しない程度に行うことは、脳の様々な部位を刺激し、認知機能を改善することにつながっていきます。

 

 うつ病には運動療法が効果があるという報告があります。どのような仕組みでうつ病が改善されるかはまだはっきりとはわかっていませんが、うつ病と診断された患者に運動療法を行うことで抗うつ薬の投与量を減らすことができたという報告もあります。

 また、運動によって、脳由来神経栄養因子(BDNF)が抗うつ剤を投与するよりも増加したという報告もあり、精神科の医師の中には患者と一緒に走ることでうつ病を治療する、いわば「ジョギングセラピー」を実践している人もいます。久保田競 田中宏暁『仕事に効く、脳を鍛える、スロージョギング』 角川グループパブリッシング p118

 

特にうつの症状は脳の炎症と深く関係していると考えられますが、運動には体内で起こっている炎症を抑える働きがあるとされています。

 

とはいっても、うつの状態にあるときは、エネルギー不足も関係しているため、運動をしようという気がなかなか起きないものです。

 

もし、からだを動かすのがどうしても億劫な場合は、ヨガや気功など、家の中でもできる、ゆっくりとした運動を行うのが効果的です。

 

また無理に激しい運動や長時間の運動を行う必要は無く、細胞内のミトコンドリアが増えるようなウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を1日に20~30分程度行うだけで十分です。

 

ちなみに慢性的な運動不足や長時間のデスクワークは、ストレスを溜め込むだけではなく、腸内環境を悪化させることで便秘の原因になったりし、免疫力の低下につながるので、注意が必要です。

 

 運動が脳の健康にいいと言われるのは、単に運動が脳への血流を促進して、細胞の成長と維持のための栄養を届けてくれることだけではない。最新の科学によると、こんな五つのメリットがある。

 

  1. 炎症を抑える
  2. インスリン感受性を高める
  3. 血糖コントロールを改善する
  4. 記憶中枢を大きくする
  5. BDNFの量を増やす

デイヴィッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「いつものパン」があなたを殺す』白澤卓二訳 p273

 

瞑想がうつの症状を改善する理由

 

三つ目は瞑想についてです。うつの症状を少しでもやわらげるために、普段から習慣として瞑想を行うことは、心のトレーニングとして最適です。

 

また瞑想は心の免疫力を高めるのにも役立ちます。

 

しかしここでいう瞑想とは、特定の宗教を信じることとは一切関係なく、心がいまの瞬間を感じるよう、トレーニングすることです。

 

具体的には、ストレスを感じてイライラしたり、過去の嫌な出来事を思い出し、気持ちが沈みこんだり、これからのことを想像して不安になったりしたら、思考が過去や未来へ向かっているのを一旦ストップして、意識を現在に戻してあげることです。

 

このことはすなわち、頭のなか様々な雑念に囚われすぎないように、呼吸を観察するなどして、心の状態をニュートラルにするということです。

 

 瞑想をすると、感情に振り回されず、人にも自分にも優しくなれます。

 思考や感情を取捨選択できるようになるので、外側の物や人間関係などもより心地いいものに整えたくなります。

 それにより、不要になったモノや人間関係を手放し、よりシンプルに、より自分らしく生きられるようになるのです。

 さらに瞑想を続けると、今やっていることに喜びを感じやすくなります。すべての日常体験の充実感が増し、幸福度も高まります。そうして満たされた状態が内面から輝く美しさや、魅力になるかもしれません。(吉田昌生『1分間瞑想法』p20

 

日常生活のなかでは、何かの思いがけない出来事によって、私たちの頭のなかが一つの考え方に支配されてしまうのは当然ですが、その時は私たちの意識は現在の瞬間から遠ざかってしまっています。

 

もちろん、その遠ざかった状態から現在の瞬間に意識を戻すために、いきなり頭の中を空っぽにするというのは難しいですし、頭のなかを空っぽにして、しばらく目の前の風景を眺めていても、気がつくと、(イヤなことが起こった時は特に)過去に起きた出来事に想いを巡らせてしまっているのは当たり前のことです。

 

ところが、瞑想のトレーニングを毎日行うと、少しずつ、過去に引きずられる時間が短くなり、代わりに現在の瞬間に意識が向くようになります。

 

そして、次第に環境に振り回されず、気持ちを安定させることが出来るようになってきます。もちろん、このことに個人差はありますが、それでも瞑想を始めてみることは、自分の心を成長させるためのトレーニングとして有効です。

 

もし瞑想に関心がある方は「瞑想法」や「マインドフルネス瞑想の方法」のページをご参照ください。

 

瞑想の効果

  • 血圧を下げる
  • 急性および慢性の痛みをやわらげる
  • 筋肉の反射時間が速くなる
  • 横隔膜と内臓をリラックスさせる
  • 呼吸の効率がよくなり、肺機能が増進する
  • 不安やストレスを減少させる
  • 強迫的な行動パターンを認識する力が増す

(ビクター・ダヴィッチ『瞑想トレーニングで人生が変わる』牧野・M・美枝 訳 p35)

うつ病

参考文献

野村総一郎『うつ病をなおす』講談社

野村総一郎『うつ病の真実』日本評論社

大野裕 『「うつ」を治す』 PHP研究所

最上悠『「脳の炎症」を防げば、うつは治せる』永岡書店

最上悠『薬を使わずに「うつ」を治す本』 PHP研究所

生田哲『食べ物を変えれば脳が変わる』PHP研究所

生田哲『心の病は食事で治す』PHP研究所

生田哲『砂糖をやめればうつにならない』角川書店

溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』青春出版社

夏井睦『炭水化物が人類を滅ぼす』光文社

山田悟『糖質制限の真実』 幻冬舎

江部康二『人類最強の「糖質制限」論』SBクリエイティブ

光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社

藤田紘一郎『人の命は腸が9割 大切な腸を病気から守る30の方法』 ワニブックス

藤田紘一郎『脳はバカ、腸はかしこい』 三五館

内藤裕二『消化管は泣いています 腸内フローラが体を変える、脳を活かす』 ダイヤモンド社

福田真嗣『おなかの調子がよくなる本 自分でできる腸内フローラ改善法』 KKベストセラーズ

辨野義己『腸を整えれば病気にならない 腸内フローラで健康寿命が延びる』 廣済堂出版

デイヴィッド・パールマター/クリスティン・ロバーグ『「腸の力」であなたは変わる』 三笠書房

ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 早川書房

久保田競 田中宏暁『仕事に効く、脳を鍛える、スロージョギング』 角川グループパブリッシング吉田昌生『1分間瞑想法』フォレスト出版