ここでは糖質制限が免疫力を高めるということについて述べています。
普段の食生活において、糖質制限を行うことは免疫力アップにつながります。
その理由は、砂糖などの糖質の摂り過ぎによって、血糖値が上がることは、生活習慣病のひとつである糖尿病をはじめとして、アルツハイマー型認知症やうつ病など、様々な病気を引き起こすことにつながるからです。
また、血液が糖によって汚れてしまうことも、細胞の新陳代謝のためには良いことではありません。もし血液がきれいな状態を保てないと、細胞にビタミンやミネラルなどの栄養素が届きにくくなり、結果的に免疫力の低下を引き起こしてしまいます。
反対に糖質制限によって血液がキレイになれば、そのぶん、免疫力はアップしていきますし、糖尿病や肥満症、認知症などの生活習慣病の予防にもなります。
さらに、糖質の摂り過ぎは、細胞内のミトコンドリアにも影響を与えるといいます。
酵母菌の培養実験によると、栄養素としてのブドウ糖が少なく、酸素が豊富な条件下で培養すると、ミトコンドリアが増えることが確認されています。全く逆にブドウ糖が多く酸素が少ない条件下で培養すると、ミトコンドリアが退化してしまうという結果です。ブドウ糖が少なく酸素が豊富な条件とは、まさしくミトコンドリアの出番といえます。ブドウ糖が少ないということはいわば飢えの状態です。(日置正人『ミトコンドリア不老術』p92)
では、そもそも「糖質制限」の「糖質」とは何でしょうか? この「糖質」については、夏井睦氏の『炭水化物が人類を滅ぼす』のなかで的確に説明されていますので、そこから引用します。
簡単にいえば、糖質とは、「血糖値を上げる栄養素(食品)である。摂取した後、すみやかに血糖に変わるのが糖質である。問題の本質は、血糖を上げるか上げないかだけなのだ。
血糖が増えると人体に害があるため、体はそれを筋肉細胞などに取りこむことによって減らすことになるのだが、糖尿病の人の場合には血糖を減らす機能のスイッチとなるインスリンがうまく働かないため、高血糖状態が続き、目の網膜や腎臓に障害が起こることになる。
だから、血糖を上げない食事ならいくら食べてもいいが、食後に血糖を急速に上昇させる食品は、少量食べただけでも問題を生じるわけだ。そして高血糖は、糖尿病だけでなく、さまざまな健康被害の原因となる。
血糖をもっとも効率的に上げるものが、ブドウ糖(グルコース)だ。だから、糖質制限においてはブドウ糖そのものが含まれる食品はなるべく避けるべきだし、体内でグルコースに変わるデンプンも控える必要がある。(夏井睦『炭水化物が人類を滅ぼす』p36~37)
しかし糖質制限で注意しなければならないのは、「オリゴ糖」や「食物繊維」の不足です。「オリゴ糖」は糖質ですが腸内細菌のエサになりますし、腸内環境を改善するために非常に大切な「食物繊維」は炭水化物に分類されますので、無理な糖質制限を課すことは、腸内細菌にも全く食べ物を与えないようにしてしまうことになってしまいます。
ちなみに腸は免疫機能のおよそ7割を担っているため、もし腸内環境が悪化してしまえば、そのぶん、免疫力が低下してしまいます。
したがって、砂糖や精製デンプン、果糖ブドウ糖液糖などの糖質は減らしても、食物繊維やオリゴ糖は腸内環境の改善と腸内細菌の健康、さらに免疫力を高めるためにしっかりと摂らなければならないのです。
また、一般的な「糖質制限」についてですが、普段の食生活のなかで糖質制限を始めようとして突然炭水化物の量を極端に減らすと、体調を崩す原因になりやすいと言われています。
そのため、ご飯やパン、蕎麦などの主食に関係した「糖質制限」を始める際は、自分のからだの調子と相談しながら、ストレスにならないようにゆるやかに行うことが大切になってくると考えられます。
たとえば北里研究所病院糖尿病センター長である山田悟氏は、『糖質制限の真実』のなかで「ロカボ」と呼ばれるゆるやかな糖質制限を提唱しています。
この「ロカボ」という言葉には、普通の「糖質制限」や「ローカーボ」には含まれない、もう一つの考え方を付け加えています。それは〝緩やかな〟糖質制限であるということです。
糖質を1食20~40グラム、それとは別に1日10グラムまでのスイーツ、間食を食べて1日の糖質摂取量をトータル70~130グラムにしましょう、というのが「ロカボ」の定義です。(山田悟『糖質制限の真実』p116~117)
普通の糖質制限と違うのは、下限を切ることによって、ケトン体が出てくるような極端な低糖質状態になることを避けているということです。これによって、ケトン体分泌に伴う血管内皮細胞の障害などを除外できます。
また、極端な糖質制限は食事の幅が非常に狭まりますが、この〝緩やかな〟糖質制限=ロカボの定義に従えば、食べられるものの幅はぐんと広がるのです。(山田悟『糖質制限の真実』p117)
さらに、糖質制限の第一人者である江部康二氏が提唱する「スタンダード糖質制限食」と「プチ糖質制限食」も、ゆるやかな糖質制限としてオススメです。
◎スタンダード糖質制限食
夕食は糖質制限をしますが、朝食と昼食はどちらか1食だけ糖質制限。つまり朝食か昼食どちらか1食だけ糖質をとります。
糖質をとる場合、1食当たり糖質50~60g。1日当たり糖質70~100gが目安です。
朝食か昼食どちらか1食だけ糖質をとるといってもご飯の大盛やおかわりは避け、量を控えめにします。また、玄米や全粒粉パン、そばの実を石臼などで挽いた十割そばなど、精製度が低くて食物繊維が多く、血糖値を上げにくい主食を選ぶように心がけるとなおいいでしょう。(江部康二『人類最強の「糖質制限論」』p79)
◎プチ糖質制限食
これは1日3食のうち夕食だけ糖質制限をする方法です。
1日当たり糖質110~140gが目安。朝食と昼食は、1食当たり糖質50~60gが目安です。
プチ糖質制限食はハードルが低い分、続けやすいです。スタンダード糖質制限食と同じく、糖質をとるときはご飯の大盛りやおかわりを避け、精製度の低いもの(ご飯なら玄米、パンなら全粒粉パンなど)を選ぶようにするとより効果的です。(江部康二『人類最強の「糖質制限論」』p80)
参考文献
夏井睦『炭水化物が人類を滅ぼす』光文社
山田悟『糖質制限の真実』 幻冬舎
江部康二『人類最強の「糖質制限」論』SBクリエイティブ
生田哲『食べ物を変えれば脳が変わる』PHP研究所
生田哲『心の病は食事で治す』PHP研究所
生田哲『砂糖をやめればうつにならない』角川書店
溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』青春出版社
光岡知足 『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』 祥伝社
藤田紘一郎『人の命は腸が9割 大切な腸を病気から守る30の方法』 ワニブックス
藤田紘一郎『脳はバカ、腸はかしこい』 三五館