不安の正体

不安の正体

ここでは不安の正体というものについて考えてみたいと思います。不安に正体は存在しないため、問題を解決するために現在(いま)を精一杯生きようとすることが大切です。

 

不安」は心の免疫力を大きく下げる要因のひとつです。また「不安」とは悩みの種だといってもよく、不安であるということは何かについて「悩んでいる」ことだと言えます。

 

しかしこの不安は情動ストレスであり、免疫系に作用し、免疫力の全般が低下するほどの悪影響を与えます。また、不安に苛まれると、恐怖といった感情との関連性がある脳の扁桃体が優位になり、それ共に論理思考を司る前頭前野の機能が低下するため、物事に対して明晰な判断が出来なくなります。

 

その不安はどのような場合に生じるのでしょうか? 不安は「期待していたのに、何らかの理由で満たされない結果が起きてしまった場合」に生じてきます。本来、何かを得られると想定していたのに、期待が外れてしまった時に、人はどういうわけか不安に陥ってしまうのです。

 

 

そのため、不安を解決するには二つの方法があります。それは以下の通りです。

  1. 期待しないこと
  2. 満たしてやること

 

したがって、不安を解消したければ、何事にも期待しない生き方を実践してみることは、ひとつの有効な手段です。そうすれば、不安の気持ちはかなり和らぎます。

 

また、満たされない事柄に対して、何らかの行動を起こすことによって、自分を満たしてあげれば不安は無くなります。なぜなら、先述した通り、満たされていないことが不安の原因だからです。

 

 

不安に正体は存在するのか?

 

ところで、不安というものに「正体」は存在するのでしょうか?

 

実は、「不安の正体」をいくら探ったところで、その正体が姿を現すことはありません。不安に実体は無いのです。そして代わりにあるのは自分の前に立ちはだかっている現実の問題だけであり、その問題を何らかの手段をもって解決することでしか、不安を打ち破ることは出来ないのです。

 

つまり不安とは、立ちはだかった問題と具体的な解決策を実行する間に生じている期間だとも言えます。自分が悩みとして抱えている問題に対して何らかの行動をおこし、解決してしまえば不安になることはありません。

 

反対に、特定の問題に対して解決策を見いだせないでいる時は、悩んでいる状態であり、その間に不安が不安として入り込んでくるのです。

 

そのため、不安を払拭するには、自分の頭できちんと考えて解決手段を見出し、問題を順序良く解決していくしか方法はありません。

不安は誰もが抱えている

不安は誰もが抱えている

目の前に具体的な問題が無いにも関わらず、常に漠然とした不安に苛まれている人の場合は、「人生」や「生と死」といった、簡単には解決出来ないスケールの大きい抱えている問題を自身の心に抱えているのだと考えられます。

 

そのような問題を解決するのは「文学」や「哲学」、「心理学」などの学問の分野だと思われます。また「宗教」の考え方を正しく学び、「宗教」とは何かを正しく知ろうとすることも心の支えになります。

 

しかし自分自身が不安の問題を解決したいのであれば、世の中にありふれているステレオタイプな言葉や誘惑に惑わされたり、特定の考え方や信条を過信したりするのではなく、より長い時間と歳月をかけて、じっくりと考えることの試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいかなければなりません。そのようにして自分なりに勉強をしていくことで、自分を作っていくことが大切なのです。

 

 

また、不安は誰もが抱えている性質のものであるため、敵視しないことも大切です。もし大きな不安に苛まれたら、「不安は誰もが抱えているものだ」と思って、不安を受け入れることが必要です。

 

もしそれが出来ないでいると、時間が経つにつれて不安は次第に大きくなっていき、ますます不安に苛まれるようになって何事に対しても冷静な判断が出来なくなります。不必要な不安は、考える能力を鈍らせるのです。そうなると人はその不安をどうにかしようとして、不必要な行動を取ってしまいがちになります。

 

さらに、人の不安につけ込んだ商売を行う悪徳業者に狙われ、詐欺などに遭いやすくなります。不安そのものには正体はありませんが、不安が大きくなりすぎると、その不安が原因で、金銭的なことをはじめとした何らかの損失を被ってしまうという結果に到ることになります。

不安の正体
不安に正体はないため、現在(いま)を精一杯生きることが大切

不安の解決策は現在(いま)を精一杯生きようとすること

ちなみに不安に関してスリランカ上座部仏教のスマナサーラ長老は、以下のように述べています。

 

 不安は努力すればプラスになります。「不安だ」と言って止まった時が危ないのです。不安がどんどん大量に増殖して、病気になります。つまり、「不安であることの不安」ということです。

 「不安だから、なんとかしなくては」と、問題に対処するためにも不安は必要です。心とはそういうものです。人は危機に遭遇しない限り力を発揮しません。で すから人生は大変なのです。人生はいつでも嫌なことばかりです。これが逆に幸せなことばかりだったら、人は何もしなくなります。「私は幸せだから、がんばるぞ」と言う人はいないのですから。

(アルボムッレ・スマナサーラ『不安なこの世を生き抜くために』)

 

不安は、困難な問題に遭遇した際、過去や未来ばかりに思いを馳せていると、生じやすくなります。そのため、問題を解決するために現在(いま)を精一杯生きようとすることが、不安に襲われないための近道です。

 

それに加えて、不安に苛まれて心身が苦しい時は、リラックスするために身体をゆるめてみたり、呼吸法瞑想法を行ってみたりすることもお勧めです。

不安にはリラックス