免疫力と体温

ここでは免疫力と体温の関係について述べています。

 

近年、若い女性を中心に、「低体温」の方が増えてきていると言われるようになりました。そして、その「低体温」は免疫力の低下につながってくると考えられるため、免疫力を高めるためには、低体温を避けることが重要になってきます。

 

もし体温が低下してしまうと、その分、からだの機能が低下してしまいます。そして、からだの機能が低下してしまうということは、すなわち、全身の細胞の元気がなくなるということを意味するのです。

 

反対に、体温が上がれば、その分、からだの機能が回復して、血流が良くなり、細胞も元気になります。そして、細胞内のミトコンドリアの活動が活発になります。

 

この免疫力と体温に関して、医師の齊藤真嗣氏は、『体温を上げると健康になる』のなかで、「体温が一度下がると、免疫力は三十%も低くなります」が、「体温がたった一度上がるだけで免疫力は五倍から六倍も高くなる」と述べています。

 

また、「低体温になると、病気に対する抵抗力が下がり、抵抗力が低下したことによって病気が発症・悪化し、それによって体内環境が悪化すると、さらに低体温になるという「負のスパイラル」にはまり込んでしまう」としています。

 

そして、「低体温がもたらす「負のスパイラル」から抜け出す最善の方法は、体温を上げることです」としています。

 

さらに、新潟大学院歯学部総合研究所名誉教授の安保徹氏は『体温免疫力』のなかで、以下のように述べています。

 

 低体温が病気をつくるのは、低体温だと免疫力が低下してしまうからです。

 免疫力は、細菌やウイルス、体内でつくられた有害な物質などを処理して、体内につねに生存に適した状態に保とうとする能力です。その力が低下しているのですから、体にさまざまな不調が現れてくるのはむしろ当然のことでしょう。(安保徹『体温免疫力』 p75

 

 体温免疫力の考え方からいえば、現在の医療は免疫力をかえって低下させ、病気を悪化させる治療が少なからずあります。解熱剤、痛みどめ、抗がん剤、ステロイド剤……。これらはすべて交感神経を刺激して、免疫力を低下させてしまいます。

 私たちは、免疫という自分自身で体をメンテナンスする、すばらしい力を備えています。自然がつくりだしたその能力を十分に発揮してやることが、病気の予防にも病気の治療にも絶対に欠かせません。

 免疫力といっても、多くの人には漠然としたものかもしれませんが、目に見える形で教えてくれるものがあります。それが体温です。(安保徹『体温免疫力』 p83

『体温免疫力』
『体温免疫力』 安保徹 著 ナツメ社

体温と免疫力とミトコンドリアの関係

 

では、なぜ体温を上げることが免疫力を高めることになるのかといえば、先程も述べましたが、体温が上がれば細胞内のミトコンドリアの活動が活発になるからです。

 

一方、体を冷やすと、ミトコンドリアの働きが弱まってしまいます。

 

特に、冷たい食べ物や飲み物を日常的に摂ることや真夏の冷房によって、身体や腸を冷やすことが、「ミトコンドリアの機能低下」や「全身の細胞のミトコンドリアの機能障害を引き起こす」ことにつながることを指摘しているのは、医学博士の西原克成氏です。

 

西原克成氏は『究極の免疫力』のなかで以下のように述べています。

 

 冷たいものを飲んで腸を冷やすと腸のパイエル板から空気の嫌いな腸内細菌が白血球内に入って、これが血中を巡り、身体中の細胞に黴菌をばらまきます。空気の嫌いな腸内細菌とは、たとえば、大腸菌などの常在性腸内細菌です。細胞に大腸菌が入りこむと、ブドウ糖がピルビン酸になるときの解糖系が阻害され、細胞内でエネルギーをつくるミトコンドリアの栄養が横どりされてしまいます。これによってミトコンドリアの細胞呼吸の働きが阻害され、細胞内でエネルギーをつくるミトコンドリアの栄養が横どりされてしまいます。これによってミトコンドリアの細胞呼吸の働きが障害されます。(西原克成『究極の免疫力』 p94

 

この結果、ミトコンドリアではエネルギー物質のATPが産生できなくなりますし、同時に、細胞はすべての活動がうまくいかなくなりますから、その器官の働きが駄目になります。そうすると、ミトコンドリアのミネラル・糖・アミノ酸・脂質の代謝が駄目になり、その結果、身体全体のレベルで、むくみ、慢性疲労、身体がつねにだるいという症状があらわれます。こうして細胞レベルのエネルギー代謝の不適当がおこることで、私たちの健康は障害されるのです。(同)

 

ストレスが低体温を引き起こす

 

もちろん、体温を上げることが免疫力を高めるといっても、闇雲に体温を上げれば良いというわけではありません。大切なのは人間の体温である37度を保つようにすることであり、避けるべきは「低体温」なのです。

 

では、「低体温」の原因は何かといえば、そのひとつに挙げられるのは「ストレス」です。

 

一口に「ストレス」といっても、環境的ストレスや心理的ストレス、物理的ストレスなど幅広いですが、免疫学者の安保徹氏は「ストレスが低体温の原因になるのは、ストレスがあると、交感神経を緊張させてしまうからです」としています。

 

そして、「なんらかの原因で血流がとだえてしまうと、血液が十分に供給されず、体温が下がってしまいます」「血流がとだえてしまう原因のひとつが、交感神経の緊張です」と述べています。

 

また、『体温を上げると健康になる!』の著者である齋藤真嗣医師は、「人間はストレス状態が長く続くと、自律神経のバランスや、ホルモンのバランスを崩してしまいます」とし、「ストレスが低体温をつくりだし、低体温が細胞にとってさらなるストレスになる」と述べています。

 

さらに、

 

 人間は幸せを手に入れようと、いろいろなことに頑張りながらここまで進化してきました。でも、ちょっと頑張りすぎてしまったようです。

 私には、そのひずみが低体温となって、人間に本来の幸せに立ち返るよう教えてくれているような気がしてなりません。

 頑張って働いて、ストレスに耐えて、あなたの体はもう悲鳴を上げています。その悲鳴が「低体温」です。齊藤真嗣『体温を上げると健康になる』p197

 

としています。

体温を上げると健康になる
齋藤真嗣『体温を上げると健康になる』 サンマーク出版

そのため、低体温を避けて免疫力を高めるためには、ストレス対策が必要不可欠になってきます。そして、具体的なストレス対策としては、呼吸法瞑想法などによって、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを整えることが挙げられます。

 

以上、ここまで体温と免疫力の関係について述べてきましたが、体温を上げるためのいくつかの方法についてはこちらをご覧ください。

体温と免疫力

参考文献 

斎藤真嗣『体温を上げると健康になる』 サンマーク出版

安保徹 『体温免疫力』 ナツメ社

石原結實『病気が治る温め方』 青春出版社 

西原克成『究極の免疫力』 講談社インターナショナル