断食(ファスティング)は身体にすごく良いと言われることがあります。断食すると五感が鋭くなるうえ、活力や精神力も回復してくるとされています。また、血液の循環が良くなるため、血圧の低下や消化力の促進といった効果もあると言われています。
食べない健康法としての断食にこのような効果効能があるのは、体内に溜まっている老廃物が排泄され、自然治癒力が高まるからだと思われます。食べ物を摂ると、消化・吸収機能をフル回転させますが、その代わりに排泄機能が低下してしまうのです。
そのため、お腹を空かせたライオンのような状態でいることよりも、飽食気味になっていることの方が多い現代人は、体内に老廃物がたくさん溜まってしまっているのですが、断食をすると排泄機能が高まり、排泄反応としてその老廃物が痰や尿や便として出るようになるといいます。
それにより体に溜まっている過剰な糖分や脂質によって汚れた血液がきれいになります。血液がきれいになれば、それだけ免疫細胞である白血球が働きやすくなり、免疫力の向上につながります。
からだの細胞の奥底には、おどろくべき力が眠っています。それを使えば、まるで自己再生するかのように、からだを若返らせることができます。
この力を目覚めさせるいい方法があります。それは、短時間の断食を定期的にくりかえすことです。
(フレデリック・サルドマン『薬のいらない生き方』山田美明 訳 p54)
また、排泄機能が高まり、腸内に停滞した便が体外に排出されることで、腸内環境が整えば、それだけ「腸管免疫」と呼ばれる腸の働きが活性化されるので、免疫力は高まります。特に小腸には免疫細胞の多くが集中していると言われています。
実際、マウスやアカゲザルなどの動物に食事制限やカロリー制限をした多くの実験では、免疫細胞のT細胞の量が増えたり、機能や産生能が向上したりしたとされています。
逆にお腹が一杯になりすぎると、栄養が血液に行き渡り、白血球も満腹の状態になって、外からバイ菌が侵入したり体内でガン細胞が発生しても食べようとしなくなると言われています。つまり、食べ過ぎの状態は、免疫力の低下につながってしまうのです。
ちなみに医師の石原結實氏は『「食べない」健康法』のなかで以下のように述べています。
食べすぎはありとあらゆる病気の患者を増やし、いくら医師が増えても、医学が発達しても対処できない症状を招く。なぜなら「食べすぎ」は、免疫力を低下させるからだ。「免疫」とは文字通り、「疫=病気」を免れるために、体に備わった能力のことである。簡単に言えば、我々の体の血液の中を勝手に泳ぎ回っている「白血球」というアメーバ様の単細胞生物の力のことを言う。
(中略)
我々が、お腹一杯に飲食すると、食物中の栄養素が胃腸から血液に吸収されて、血液中の栄養状態もよくなる。すると、それを食べた白血球も満腹になり、外からバイ菌やアレルゲンが侵入してきても、体内でガン細胞が発生しても十分に、食べようとしない。つまり、「免疫力」は落ちるのである。
逆に、我々が空腹の時は、血液中の栄養状態も低下し、白血球も充分に栄養を摂れず空腹になるので、バイ菌やアレルゲン、ガン細胞を貪食、処理する能力が高まる。つまり、免疫力は増強するのである。
(石原結實『「食べない」健康法』)
このように、食べ過ぎは免疫力が低下する原因になってしまうと考えられます。しかし、普段、毎日3食食べているのに、いきなり断食を始めるというのは、なかなか難しいと思われます。
そこで石原結實氏が『「食べない」健康法』のなかで薦めているように、朝は人参リンゴジュース1~2杯で済ませ、昼はそば、夕食は何でも、といったように、少しずつ食事の量と回数を減らしてみるというのが行ないやすいと思われます。
また、断食までいかなくても1日1食や2食でかなり体調が良くなり、健康になったことを感じる人は多いといいます。
食事の回数を減らしてどうしても空腹感に悩まされるという場合は、低血糖の状態に陥っているので、はちみつをスプーンで1、2杯だけ舐めたり、黒糖入りのしょうが湯などを飲むことで身体を温めたりすると、気持ちを紛らわすことが出来ます。
食べない健康法は万人に勧められる、というわけではありませんが、糖質や脂質の多い食生活を毎日行っている場合は、普段から腹八分の少食を心がけたり、胃腸を休めるための週末断食を試みたりするなど、時々食事制限をして体内環境をキレイにすることを心がけてみると良いと思います。
さらに時々空腹を感じることは、細胞内のミトコンドリアを増やすことにもつながるため、ミトコンドリアの健康法にもなります。
そのほか、食べない健康法と関連させて白湯健康法などもおすすめです。