脳内のセロトニンを増やす

心の免疫力を高めるには、脳内ホルモンであるセロトニンを増やすことが大切です。

 

ここでは、有田秀穂氏の『脳からストレスを消す技術』(サンマーク出版)から、「脳」が感じる「ストレス」とは何かについて考えてみたいと思います。

 

長時間のデスクワークやハードな仕事などで脳に疲労が溜まっていると感じた場合、その原因は一般的には強いストレスが長い時間かかっているためだとされます。

 

強いストレスは慢性的な疲労につながり、その慢性疲労を放っておくと、ホルモンや自律神経のバランスが乱れ、免疫力が下がる原因になってしまいます。

 

過剰なストレスは万病のもとになりかねないのですが、『脳からストレスを消す技術』には、脳が感じるストレスの経路は身体の経路とは違うということが述べら れています。

 

痛みなどの身体的ストレスを感じた場合には、視床下部の室傍核というところが下垂体を刺激し、ACTHという副腎皮質刺激ホルモンをするというのですが、その結果、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが大量に分泌されると、高血圧や糖尿病を引き起こす原因になるそうなのです。

 

しかし脳へのストレス経路は、身体の場合とは違い、脳幹のほぼ真ん中に位置している縫線核という、セロトニン神経がある場所が関わっていることが分かったそうです。

 

「セロトニン」は不足するとうつ病やパニック障害など精神的な病気に深く関わってくる、よく知られた神経伝達物質ですが、視床下部から縫線核にストレス情報が伝わると、セロトニン神経の働きが阻害されるのだと言います。

では脳がストレスを感じるのはどういう時なのかと言えば、有田氏によれば、

 

  • 「快が得られなくなることによって生じるストレス」
  • 「自分が相手のためにと思ってしていることが、正当に評価されないことによって生じるストレス」


の二つが、脳を発達させた人間ならではの特徴的なストレスだとしています。

 

このようなストレスは、実は人間が発達させた脳の前頭前野の部分に関係があり、有田氏は前頭前野の三つの働きを挙げています。

 

 共感脳…… 前頭前野の中心部の働き。セロトニン神経が関わる。オーケストラの指揮者のように脳全体のバランスを整えて、「平常心」をもたらすという働きをする箇所。 「それ自体が何か仕事を するわけではない」が、ドーパミン神経やノルアドレナリン神経の過度の興奮を抑え、「クールな覚醒」をもたらす。

 

 学習脳……前頭前野の外側。ドーパミン神経が関わる。報酬を前提にして様々な努力をする。何か大きなことを達成した時にご褒美としての「快」をもたらされるが、反対にその報酬が与えられないと、強いストレスを感じることになる。

 

 仕事脳…… 前頭前野の外側上方。ノルアドレナリン神経が関わる。車の運転のように同時に複数の仕事を行うワーキングメモリーと呼ばれる機能をもつ。、内外からのスト レスが強すぎると、生命の危機や不快な状態と戦う時に分泌されるノルアドレナリンが多く出すぎてしまい、そのために脳が過度の緊張に陥り、かえってワーキ ングメモリーが動かなくなってしまう。

 

脳ストレスを無くすために大切なのは「共感脳」

 

この中で脳ストレスを無くすために有田氏が特に大事だとしているのは「共感脳」です。

 

セロトニン神経がある共感脳はセロトニンの分泌と関わっているのは もちろんのこと、他人との「共感」や「社会性」にも関係してくるため、「セロトニン神経」を鍛えることは、自分が他人から「正当に評価さないストレス」を 受け流すことにつながってくるのだと言います。

 

また、それだけではなく、平常心をもたらす働きもあるため、「快が得られなくなることによって生じるストレス」にも強くなるのだとしています。

 

さらに有田氏は、身体的なストレスに対しては睡眠が最も有効で、報酬としての「快」が与えられないストレスには、リズム運動などでセロトニンを増やすトレーニングが効果的だとしていますが、他人に認められないことで生じるストレスに対しては、「相手への共感を高める癒し」、「共感脳を活性化させる「涙による癒し」が最も効果的」だと述べています。

 

『脳からストレスを消す技術』の最初と最後の部分では、私達が感じる「ストレス」を「苦」として、他人に対する「共感」を「慈悲」として捉えたお釈迦さま (ブッダ)のことが語られていますが、確かに私達人間が感じるようになった脳のストレスの問題は、大昔にお釈迦さまが示された教えと重なってくるのです。

脳とストレス