認知症予防と腸内環境改善

認知症を予防するためには腸内環境の改善が大切になってきます。また腸内細菌の多様な集まりである腸内フローラのバランスを整えることも重要です。

 

ではなぜ腸内環境を改善することが認知症の予防につながるのでしょうか?

 

そのことについてはまず、「腸内細菌のバランス」と「便秘」の関連が指摘されています。

 

腸内細菌学のパイオニアであり、東京大学名誉教授である光岡知足氏によれば、認知症やアルツハイマー病の患者さんの腸内フローラは、健常者の腸内フローラと比べた場合、悪玉菌(ウェルシュ菌)の菌数が顕著に高い傾向にあったと言います。

 

また、その患者さんたちの多くは便秘にも悩まされていたとされるため、腸内環境の悪化は、認知症と何らかの関係があると推察できます。

 

ところで「認知症」は脳の神経細胞の死滅や脳機能の衰退が原因で起こるとされていますが、では、なぜ腸内環境や腸内フローラが脳の機能を健康に保つのに関係してくるのでしょうか?

 

実は腸は「第2の脳(セカンド・ブレイン)」と呼ばれているほど、脳と密接な関わりがあるのです。

 

また、「腸脳相関」という言葉があり、腸と脳は密接に連動していると言われています。ちなみに、消化管である腸にも、脳のおよそ6割にものぼる数の神経細胞が存在すると言われています。

 

 腸の神経系は第二の脳だとよく言われる。数億個にも上るニューロンが、胃腸を制御する腸神経系と脳のあいだをつないでいる。この大規模な通信網は、食道から肛門までの消化管全体に目を配っている。腸神経系はきわめて大規模で、中枢神経系からの入力がなくとも独立してはたらくとはいえ、両者はつねに情報を交換しあっている。ジャスティン・ソネンバーグ,エリカ・ソネンバーグ『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 p172~173

 

腸内細菌のバランスを整えることが認知症予防につながる

 

さらに、脳内で分泌される「セロトニン」や「ドーパミン」といったホルモンの前駆体は腸で作られることが知られています。

 

「セロトニン」は幸福感に関わりますし、「ドーパミン」はやる気や報酬系に関係しています。

 

この「セロトニン」や「ドーパミン」を合成する際にはビタミンB6や葉酸といったビタミン類が必要になってくるのですが、このビタミン類を作るのは実は腸内細菌の役割です。

 

ちなみにアルツハイマー型認知症は、血中の「ホモシステイン」の濃度が高いと、発症リスクが高まるとされています。

 

「ホモシステイン」とは必須アミノ酸の一種である「メチオニン」の代謝における中間生成物ですが、このホモシステインの濃度が高まる理由は、ストレスの影響などによるビタミンB6やビタミンB12、葉酸の不足だと言われています。

 

先程述べたように、これらのビタミン類を作っているのは腸内細菌であるため、普段から腸内細菌のバランスを整え、腸内フローラを改善していくことは、脳の状態を若々しく健康に保ち、40代や50代から認知症を予防することとも関係していると考えられるのです。

 

そしてそのために必要なのは、乳酸菌食物繊維オリゴ糖納豆をはじめとした発酵食品など、腸内細菌のエサになったり、腸内環境を改善したりする栄養素がたくさん含まれた食品を日頃から多く摂るようにすることなのです。