瞑想は日ごろの雑念を振り払い、心をいったんリセットしてニュートラルの状態に戻すのに最良の方法です。また瞑想は免疫力アップや脳疲労の回復にも役立ちます。
瞑想を行うことで深いリラックスを感じることが出来れば、副交感神経が働き、自律神経のバランスが整っていくため、低下した免疫力が回復していきます。
さらに免疫系と神経系、内分泌系は相互に作用しているため、瞑想を行うことは心身のバランスを全体的に整えるのにも役立ちます。
特に忙しすぎることが当たり前になっている現代社会において、学校や会社のことや、人間関係、お金のことなどの悩みや不安で頭の中が一杯になり、その内容にストレスを感じるようになってくると、それだけ身体は弱り、精神面にも影響して気力も減退してしまいます。
そんな時は免疫力維持のために瞑想を行うのが有効です。
なぜなら瞑想を行うと怒りや憎しみの感情を司る旧脳よりも、理性や論理を司る前頭前野が働くようになるので、冷静になり、落ち着くことが出来るようになるからです。
その瞑想には様々な方法があり、中には師がついていないと危険とされるものもあるので、具体的に何の瞑想法が良いのかということについて言うことは出来ません。また、どんな瞑想法が自分に合っているのかということについては自分で探っていくしかないように思います。
しかし瞑想を行うことは特別なことではありません。
実は普段何かに集中している状態は、ある意味、瞑想しているといえるのです。なぜなら、瞑想している状態 とは、頭の中に雑念が浮かんでいないことであり、瞑想していない状態とは、頭の中の雑念に気をとられていることだからです。
例えば電車やバスに乗っている時に、車窓から風景を観察することも、ある意味、瞑想していると言えます。
ただし、その間、「お腹が減ったから何か食べたい」と思ったり、過去の嫌な出来事を思い出して落ち込んだり、将来の心配事について不安になったりしたら、それは雑念が入り込んだことになり、瞑想が途切れたと言えます。
試しに車窓風景を観察し続けてみると、雑念が全く浮かばないようにするというのはかなり難しいと思われます。実際、瞑想を極めた人でも少なからず雑念は浮かんでしまうといいます。
しかし瞑想の達人と呼ばれる人は、雑念が頭に浮かんでも、雑念によって集中が途切れる時間の幅が短いため、すぐに車窓風景の観察に意識を戻すことが出来るのです。
つまり、瞑想を始める第一歩として大事なことは、心を空っぽにし、なおざりになっている「今」という現在の時間を感じるようにすることで、雑念ばかりで疲れている脳を休め、いったんリセットし、リフレッシュしてあげることなのです。
したがって瞑想を始めるうえで大切なことは、最初から瞑想を究めようとすることではなく、まず、瞑想をやってみる時間を1分間でも良いのでもつことです。
そして瞑想を試みることで、過去や未来に飛んでしまっている気持ちをいったん現在(いまの瞬間)に戻してあげることなのです。
ここでオススメしたいのは、テーラワーダ仏教のスマナサーラ長老や地橋秀雄氏が日本で紹介している「ヴィパッサナー瞑想法」です。
ヴィパッサナー瞑想法には歩く瞑想や座る瞑想など様々なやり方がありますが、初心者にも簡単に出来るのは、呼吸をしながら実況中継するやり方です。
まず座布団や椅子などに座って背筋を伸ばし、呼吸を深めていきます。
そうしたら息を吸う時に、鼻の穴周辺に意識を集中させ、吸う息を感じながら「吸いま す、吸います、吸います」と実況中継します。次に、息を吐く時にも「吐きます、吐きます、吐きます」と、実況中継を繰り返していきます。そのようにして呼吸の観察を続けていきます。
その間、もし頭に何か関係ない雑念が浮かんできたら、その雑念に対しても「雑念、雑念、雑念」や「妄想、妄想、妄想」と雑念に引きずり込まれないように ラベルを張ることで対処します。
もちろん、それでも気づかないうちに呼吸を観察することを忘れ、物思いに耽るようになってしまうことは多々あります。
そういう時は、 なるべく早く雑念に囚われていることに気づいて、再び、呼吸の観察に意識を戻すようにします。最初は気が散って考え事をしてしまうことが多いですが、慣れてくると少しづつ意識を呼吸の観察に戻すのが早くなります。
鼻孔の辺りに集中することが飽きて、頻繁に雑念が浮かぶようになったら、今度は手をお腹に当て、呼吸している間のお腹の動きを観察するようにします。
吸っている間、手のひらにお腹のふくらみを感じたら、「ふくらみ、ふくらみ、ふくらみ」と実況中継します。吐いている間も、お腹がしぼんでいくのを手のひらで感じたら「ちぢみ、ちぢみ、ちぢみ」と実況中継します。そして飽きたらまた呼吸の観察を鼻の辺りに戻します。
管理人が作った瞑想用音源動画です。瞑想する際にお使いください。
ヴィッパサナー瞑想法の注意点としては、繰り返していくうちにだんだん慣れてきて、身体が感じるよりも早く実況中継してしまうことがあるので、必ず事実を事実として確認してから、実況中継するようにしてください。
この瞑想法で大切なのはあるがままをあるがままに感じ取り、ラベリングしていくことです。そのようにして現在の状態を観察し、見守り、いままで気づかなかった微細な感覚に気づいていきます。
また、瞑想を究めようとして焦る必要はありませんし、雑念が浮かんでばかりでも自分を責める必要はありません。
瞑想において重要なのは、上手い下手ではなく、このヴィパッサナー瞑想法を毎日行うことによって、少しずつ、今まで気づかないでいたことに気づいていくことなのです。
そして世界の豊かさを知ることなのです。
自分の心と身体、人間関係、空間、生活を大切にして、今この瞬間を丁寧に生きることで内側が満たされていきます。
どれだけ成功して大きな家に住んでいても、将来に対する不安を感じ、過去を思い返して後悔ばかりしていたら、幸福ではありません。
もしもその人が、地位や名誉、財産=自分の存在価値としていたら、その人は、弱く、不安定になります。
なぜなら、地位や名誉、財産というものは、常に移ろっていくものだからです。無常であるものを拠り所にすると苦しくなります。
瞑想で、心と身体の働きを静かにしていくと、自分が「そのままで満ち足りた存在である」ということを思い出します。心の平安、喜び、今、ここの内側の幸せとつながることができるようになるのです。
このことを知識だけでなく実際に体感し、自覚することが本来の瞑想の目的です。
(吉田昌生『1分間瞑想法』p212~213)
(ヴィパッサナー瞑想法について詳しく知りたい方は、アルボムッレ・スマナサーラ著『現代人のための瞑想法』や地橋秀雄著『ブッダの瞑想法 ヴィパッサナー瞑想の理論と実践』などをご参照ください。また、吉田昌生氏の『マインドフルネス入門』『1分間瞑想法』など、マインドフルネス瞑想法について書かれた本も、考え方はヴィパッサナー瞑想と基本的に同じなので、瞑想を深めるために役立ちます)。