ここでは蛋白(たんぱく)質の免疫力効果について述べています。体の組織作りのために必要なタンパク質は、しっかりと摂ることが免疫力アップのためには大切です。
しかし、タンパク質をエネルギー源として必要以上に摂り過ぎてしまうと、肝臓や腎臓に負担をかけ、免疫力低下の原因にもなってしまいますので、健康維持のためには、過剰摂取を避け、「プロテインスコア」などを意識して、良質なたんぱく質をバランスよく摂取することが重要になってきます。
タンパク質は約20種類のアミノ酸から作られる高分子化合物であり、体内では、常に分解と合成を繰り返し、生命を維持するための重要な働きをしています。その働きとは以下の通りです。
①筋肉や内臓から皮膚、爪、髪まで生体すべてを作っています。
②代謝に欠かせない酵素を作ります。
③消化管や脳神経で機能を調節するペプチドホルモンを作ります。
④体を感染などから守っている免疫グロブリンを作ります。
⑤血液凝固にかかわるトロンビンやフィブリノーゲンを作ります。
⑥すべてのたんぱく質はDNAからRNAを経て合成され、遺伝子現象を発現します。
⑦ヘモグロビンは酸素を運搬します。
⑧リポたんぱく質は、血中で脂質を運搬します。
⑨血液やリンパ液などの浸透圧を調節しています。
⑩血液を弱アルカリ性に保ちます。
⑪エネルギー源としても利用されます。
(中嶋洋子監修『栄養の教科書』より抜粋)
また、人間の細胞はタンパク質で構成されていますが、このタンパク質を構成している成分がアミノ酸です。
さらに、白血球中のNK(ナチュラルキラー)細胞をはじめとする免疫細胞もアミノ酸から作られているため、免疫力や健康な生活を維持するためにアミノ酸は必要不可欠です。
アミノ酸は自然界では500種類ほど存在すると言われていますが、人間の身体のタンパク質を構成しているのはわずか20種類です。そのうち9種類は体内で合成出来ないため、「必須アミノ酸」(バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・トリプトファン・ヒスチジン・スレオニン) と呼ばれています。
そのうち特に免疫力維持に関わってくるのは、リジン、ロイシン、トリプトファンです。
リジンは主に、からだの組織を修復し成長に関わる作用があり、たんぱく質の組み立てに関わっています。たんぱく質は体内で細胞や細菌・ウィルスの侵入を防ぐ抗体の材料として用いられます。
ロイシンは肝臓の機能を強化する大事な役割があるます。普段不足することは少ないですが、肝臓を労わり、肝機能を向上させたい時にはある程度の摂取が必要になってきます。
トリプトファンは体内に取り込まれると、脳内物質のセロトニンやメラトニンの材料となる性質があることから、精神の安定を促す効果があります。
また、メラトニンには体内時計の調整を行う効果があり、睡眠と密接な関係があるため、トリプトファン自体を摂取することでメンタル面の安定や不眠症の改善といった効果を得ることが出来ます。
残りの11種類は体内で作られるため「非必須アミノ酸」とされていますが、決しておろそかにしていいわけではありません。
特に非必須アミノ酸の「グルタミン」は免疫器官である小腸の主なエネルギー源にもなっています。小腸に集まる免疫細胞の中でも特に重要なリンパ球のエネルギー源にもなっており、体内で不足するとリンパ球の数と働きが減少し、免疫力が低下してしまいます。
私たちの体の機能を担当する免疫細胞、抗体、補体はタンパク質からできています。よって、全体の免疫機能の維持には、基本的にバランスのよい食事をとる中で、適量のタンパク質をとることが不可欠です。例えば、カロリーリストリクションを行って、総摂取カロリー制限をする場合でも、良質タンパク質の適量摂取はけっしてはずしてはいけません。
(根来秀行『身体革命 世界最先端のアンチエイジングの法則』)