うつと低血糖症

ここではうつと低血糖症の関係について述べています。

うつの症状が起こってくる原因としては、脳の慢性的な炎症など様々なものが挙げられますが、意外に落とし穴なのが、「低血糖症」です。

 

この低血糖症は砂糖をはじめとした糖質の摂り過ぎによって引き起こされやすくなるとされています。

 

ではなぜ、砂糖などの血糖値を急激に上げる糖質の何が問題なのかといえば、砂糖や精製でんぷんなどの糖質は、血糖値の乱高下を引き起こしてしまうからです。

 

たとえば生活習慣病のひとつである糖尿病とうつ病は併発するリスクが高いと一般的に言われていますが、実はGI値が高い糖質(白砂糖、白米など)の摂り過ぎは血糖値を高めるだけではなく、その後、インスリンが大量に分泌されることによって今度は急激に血糖値を低下させてしまうのです。

 

その血糖値の乱高下が、うつや不安障害をはじめとした精神的不安定さを引き起こすということが、薬学博士の生田哲氏や栄養療法の専門家の溝口徹氏などによって指摘されていますので、引用してみたいと思います。

 

 低血糖という現象は、糖尿病で血糖値を下げる薬を飲んだり、インスリンを注射している人が誤って大量に注射したときにしばしば発生することは、よく知られている。しかし糖尿病でなくとも、血糖値が高血糖と低血糖の間を乱高下する人は、かなりいる。これが〝食源性の低血糖症〟で本書で取り上げているものだ。血糖値がこのように乱高下する低血糖症の人には、イライラ、怒り、眠気、疲労感、うつなどの症状が現れる。(生田哲『心の病は食事で治す』p68

 

 心の平安は、ガソリンであるブドウ糖を脳に安定的に供給してこそ得られる。脳へのブドウ糖の供給が不安定になる現象を低血糖症といい、ムードスイング、心の混乱、脱力感、無気力、めまい、震え、不安、うつなどの症状を引き起こす。

 もちろん、血糖値の乱高下は、甘い物を食べたすべての人に起こるのではない。もしだれにでも起こるなら、糖尿病や低血糖症を調べるために七五グラムのブドウ糖を飲む糖負荷試験は臨床検査として使えないことになる。低血糖症の人がこれらの甘い物を食べたときに血糖値の乱高下は起こるのである。(生田哲『心の病は食事で治す』p71~72

 

 

 ただし、低血糖症というのは、血糖値が低くなることだけが問題になるのではない。上がったり下がったりを繰り返したり、低い値で推移していくという状態もある。インスリンの分泌が正常なかたちから著しく逸脱する人もいるなど、人によってあらわれ方はさまざまだが、一日を通して、安定した血糖値を維持することが困難になることによって、身体や心に起こってくるさまざまな症状が、問題になる病気なのである。(溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』p111~112

 

 血糖値の安定が維持できないと、当然、脳に送られるブドウ糖も安定しない。脳にとっては一大事だ。そこで、血糖値が上がればインスリンが放出されるように、血糖値が下がりすぎれば、それに対応してさまざまなホルモンが動く。血糖値が下げるホルモンはインスリン一種類しかないが、上げるホルモンは多数存在していて、それらがさかんに働き出すわけだ。(『「うつ」は食べ物が原因だった!』p112

溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』
溝口徹『「うつ」は食べ物が原因だった!』

低血糖症を防ぐために大切な食事・運動・休養

このように低血糖症とうつの症状は深く関係していると思われますが、この「低血糖症」に関して生田哲氏は『心の病は食事で治す』のなかで、「低血糖症は、食事をバランスのとれたものに変更し、不足している栄養素をサプリメントで補い、運動、休養を取り入れるなど、生活習慣を改めるならば、著しく改善されることが実証されている」と述べています。

生田哲『心の病は食事で治す』
生田哲『心の病は食事で治す』

すなわち、深刻な低血糖症に陥らないためにまず重要になってくるのは、生活習慣なのであり、具体的には日頃の食習慣を見直して、出来る範囲で改善していくことなのです。

 

そして、気分を落ち着かせてうつの症状を少しでもやわらげ、心の状態を安定させるために大切になってくるのは、砂糖や精製デンプンなどの血糖値を急激に上げる糖質を控えることから始める糖質制限です。

 

しかし糖質制限といっても、炭水化物に分類されている食物繊維や、オリゴ糖などの糖質は、腸内環境を改善するために必要不可欠なので、うつの症状をやわらげるためには、砂糖などを減らす代わりに、食物繊維やオリゴ糖をたっぷりと摂るようにする食事が大切になってきます。